今までに書いた刀使ノ巫女SS振り返り

この記事は 刀使ノ巫女 Advent Calendar 2018 8日目の記事として書かれました。今は12月8日42時30分です。

12月7日→舞台刀使ノ巫女を4/7見た結果の気づきを羅列する - 非論理的ドリル
12月9日→刀使ノ巫女のキャラクターに関する備忘録 - Ephemeris Humilis

adventar.org

 

4日目は真面目な記事を書いたので、今回は自分語りをします。

SSとは、ウィキペディアによると「二次創作小説/外伝(side story)」「短編小説(short story)」「ショートショート(short short)」の略語だそうです。
この記事の中では最初の「二次創作小説」という意味で使います。
いきなり自分語りなのですが、私にとってSSを書く行為は以下の意味を持っています。

  • 作品やキャラクターに向き合い、理解を深める
  • 自分の中にある「好き」(物語の構造が好き、キャラクターが好き、キャラクター同士の関係性が好き、など)の表現
  • 作品世界観の中で「こんなやり取り・お話があったらいいな」(見たい・読みたい)の実現

技術も表現したい内容も未熟だとは思うのですが、この記事ではこれまで書いてきたSS(pixivに投稿したもの)について振り返っていきたいと思います。
すなわち自分語りなのですが、同時に作品語りにもなっている……はず。

しかし果たしてこの記事を読む人はいるのか……?

胸の内のあたたかさ

2月9日(金)投稿。刀使ノ巫女で私が初めて書いたSS。
タイミング的にはアニメ6話の放送直前です。
この数日前にふとpixivで刀使ノ巫女で検索したところ1件だけ小説が書かれており、それに刺激を受けて書いたSSでした。

内容は本編補完で、3話で可奈美の『熱』を受けた沙耶香が5話で舞衣の『あったかさ』に触れるまで何を想っていたのか、そして舞衣に触れた(触れられた?)ことでどう変わっていったのか、を私なりに想像したものになります。
触れた『熱』の意味が分からない沙耶香の心の動きをどう表現するか、に気を遣って書いた覚えがあります。

こだわったのは、この次のSSもそうですが、この作品ならではの要素である剣術を使うこと。
これはアニメ4話で使われていた「斬る剣」「守る剣」に影響を受けていて、このSSでも同じく「斬る剣」「守る剣」を使っています。
一つ心残りは、後に『Heart of Gold』の歌詞を見たら「あたたかい」じゃなくて「あったかい」だったこと。痛恨……。

踏み出した一歩の先に

2月16日(金)投稿。タイミング的にはアニメ第7話の直前。
刀使ノ巫女AT-X最速放送が金曜日21:30~だったはずで、放送前に投稿しようと金曜日の夜に頑張って書いていた記憶があります。
この後のSSでもいくつかそうやって金曜夜に書いていたものがあったはず。

内容は舞衣の誕生日祝い(2日遅れ)で、舞衣と可奈美の出会いを妄想したものです。
舞衣の誕生日祝いとして舞衣が可奈美に型稽古を見せてもらうことを頼み、その流れから二人の出会いを振り返る、といったお話。
今もそうですが、この頃から私は舞衣と可奈美の関係が好きでした。
コミック1巻の書き下ろし前日譚に特によく表れていると思うのですが、この二人は互いが互いの心の支えになってきた関係だと思っています。
舞衣は自分の剣の目指す先として。
可奈美は自分の剣に向き合ってくれる存在として。
それぞれ相手をかけがえのない相手として見ていると思っています。
その二人の関係への「好き」を表現したくて書いたお話でした。

同時に、このSSから一年にわたる誕生日記念SSの旅が始まりました。
この一週間前に智恵、1月には姫和の誕生日があったのですが、その頃はSSを書こうという意識がまだ無かったので。
確か、智恵の誕生日をとじとも公式ツイッターで見て、へ~と他の子の誕生日を調べたら舞衣の誕生日がすごく近くて、それで迷った末に書こうと決めた記憶があります。
なぜ迷ったかというと、この時点で約16人の誕生日が公開されていたわけで、確実に大変な一年になると予想できたからです(実際現在進行形で大変なことになっていますが……)。
それでも書こうと思ったのは、全員分の誕生日SSを書く過程で、必然的に全員と真剣に向き合い理解を深めることになるから、です。

ちなみに過去妄想としては、後に円盤特典ショートストーリーなどで舞衣と可奈美の出会いは美濃関に入ってからっぽいことが語られており、このお話のような出会いはありえないことになっています。

お友達

3月10日(土)投稿。アニメ10話放送直後。
結芽の誕生日祝い(7日遅れ)で書いたSSで、内容は7話で沙耶香が舞衣に探し出される前に結芽に見つけられていたら、というif物。
結芽は殺伐とした斬り合いをしようとするのですが、沙耶香に流されている間に二人で遊園地で遊ぶことになっている、というお話です。

やりたかったことは二つあって、一つは、沙耶香と結芽は何かが違っていれば仲の良い友達になれていたんじゃないか、という妄想でした。
同じ天才と呼ばれる中等部一年生同士の刀使として、互いに心を許して遊んでいる(斬り合いの意味ではなく)姿を見たい、というもの。
結芽が年相応の笑顔を見せる姿を見たかったのでした。

もう一つは、結芽の「かっこいい部分」を扱いたいというもの。
具体的には、9話で見せた「戦闘に荒魂の力なんてこれっぽっちも使ってない」です。
結芽の強さはあくまで結芽自身の強さであり、その強さにプライドを抱いているところが、結芽という人物を扱う上で大事な部分だと思っていました。
私が「戦闘『に』」の機微を読み取れなかったことで、SS内では結芽は体にノロを打ち込んでいないことにしちゃってますが……。

そしてここから先、誕生日SSと言いながら誕生日の話を一切しないSSが書かれていくことになります。

前人未到の彼方へ

5月2日(水)投稿。時期的にはアニメ16話と17話の放映の間。イベント『四の太刀』の直後でもあります。
内容は、アニメ12話でタギツヒメを隠世に追い払った(ということにこの時はまだなっていた)姫和が病室で目覚め、可奈美と話をし、過去の呪縛から解放されるという話です。
タイトルは言わずもがな「Shining Double Star」の2番の歌詞から。
この時系列の話は後にドラマCD第12.5話で扱われており、そこではむしろ可奈美の方が入院が長かったことが描写されていますね。

このSSでやりたかったことは、アニメ12話での姫和と可奈美の感情を掘り下げることでした。
姫和が真のひとつの太刀を使う前に可奈美をちらっと見て微笑むところ。
そして可奈美が姫和をどういう想いで引き止めたのか、その結果として(ではなかったわけですが)関東に荒魂が頻出するようになってどう思っているのか。
その上で、姫和がどういう想いで再び刀使として戦うことを決意したのか。
そういった部分を掘り下げたかった、という動機です。
最後に可奈美が窓を開けるのは溢れそうな涙を姫和に見せたくなかったからなんですが、伝わっているのだろうか。

実は元々、私はアニメ13話でこういう話をやるんじゃないかと思ってたんですね。
姫和がベッドの上で目を覚ますと、ぶわあっと白いカーテンが風に舞って、髪を靡かせる可奈美の横顔が目に入る――みたいなやつです。
で、それが13話で無かったので、じゃあ14話の頭でやるのかな、と思ったらそれも無くて。
なら自分で書くしかないと書き始めたのですが、思ったより時間が掛かってる内に5月になってしまっていました。

さらに後々になって見ると、姫和が過去の呪縛から解き放たれるのは24話でまだ先だったという……。
この時の私は、波瀾編は今度は可奈美を姫和が救う話になると思ってたんですよね。
間違いではないにしろ、姫和がどういう想いを過去に置いたままなのかは完全に読み間違えていました。

大好きな相棒

5月15日(火)投稿。時期的にはアニメ18話と19話の放映の間。
エレンの誕生日SS(当日!)です。
内容は、体調の悪いエレン(自覚なし)が休暇の薫を気遣って一人で荒魂討伐の任務に出たところ窮地に陥り、薫に助けられるというもの。

やりたかったことは二つあって、一つはエレンと薫の関係をしっかりと描くことでした。
エレンは明るくてハイテンションに見えて、実は頭が回る切れ者でもある……というのがよく言われることだと思うのですが、さらに言うと頭が回るだけに他者への気遣いを優先して、自分が疎かになりがちな子でもあると思っています。
そして、アニメ6話冒頭の薫の「あのバカ」や、後にアニメ21話でも「お姉さんぶりやがって」という台詞があるように、薫はエレンのそういう危うさに気付いています。
エレンがそうやってリスクを背負ってしまったところに、薫がヒーローのように助けに来るという関係が、この二人の関係の一側面なんじゃないかと思います。
薫の誕生日の方でもう一度言及しますが、エレンの誕生日では「エレンから見た薫のかっこいいところ」を描き、薫の誕生日では「薫から見たエレンのかっこいいところを描く」ということがしたかったのでした。

もう一つは明るい地の文へのチャレンジで、このためにこのSSはエレンの一人称になっています。
しかし、うまく書けたかというとちょっと……という気はします。
カタカナを使うタイミングが難しかった。

お悩みは何?

5月31日(木)投稿。アニメ20話と21話の放送の間。
姫和が大変なことになって、21話はいったいどうなるんだと胸をざわつかせていた時期ですが、これは美炎の誕生日SS(当日)です。
内容はアニメ12話と13話の間、美炎が落ち込んでいる様子を感じた清香・呼吹・ミルヤの三人が、落ち込む理由を「可奈美と実力差を感じたから」だと考え励まそうとするが、実は髪飾りを片方失くしたのが原因だった、というものです。
ですが、可奈美との実力差による焦りもゼロというわけではなく、それを見抜いていた智恵に美炎が前向きな心情を語ります。

これは結構何を書くかで悩んだ誕生日SSでした。
美炎を掘り下げるとなると、すぐに思い浮かぶのは加州清光の欠片や美炎の集中力のことですが、二次創作で扱うには本編での情報開示がまだ足りず、ちょっと書ける気がしませんでした。
代わってテーマに据えたのが、美炎は可奈美をどう思っているのか、でした。
当時はまだとじともメインストーリーも第1部までしか開放されていなかったので、上に書いたようなあらすじの話が妄想できたわけですね。

やりたいことは二つあって、一つは調査隊のわちゃわちゃでした。
調査隊は5人のセット感(今は5人から増えましたが)が好きで、誰か二人の関係にフォーカスを当てるというよりは、全員でわちゃわちゃやっているところが見たかったという動機です。
そのせいで、調査隊は初書きだというのに、さらに5人分の台詞感覚を掴む必要があって、なかなか大変だった記憶があります。

もう一つは、美炎の前向きな性格を描くことでした。
「なせばなる!」という台詞に象徴されるように、美炎はどんな場面でも前向きな明るさで皆を助けてきました。
特にその前向きさに惹かれてきたのが智恵なんじゃないかな、と、そういう気持ちでSSの終盤の展開を書いたはずです。

実は誕生日SSはそのキャラの一人称視点か、そのキャラ寄りの三人称視点で書くという縛りで書いているのですが、4人目にして既にその縛りが破られているという……。

かけがえのない

6月16日(土)投稿。アニメ23話最速放送後、ただし投稿は23話を見る前です。
薫の誕生日なのですが、SSは紫様の誕生日(3日遅れ)です。
内容は、タギツヒメを身に宿した紫様が、誕生日プレゼントと称してタギツヒメから「あり得たかもしれない幸せな未来」の悪夢を見せられるというものです。

この手のお話は別ジャンルで二つほど書いたことがあり、このSSは私の趣味と手癖がものすごく出たお話な気がします。
いわゆるどんでん返し系(のごく小さいもの)を書いてみた、という感じです。

やりたかったことは、学長陣の会話と、本来の紫様の柔らかい口調を書くことでした。
このSSは誕生日当日である6月13日に書き始めていて、とじともでの過去の学長陣に祝われている紫様のイラストを見て、ああいいなぁ、と書いたものだったりします。
しかし、いろはさんの方言が再現できる気が全くせず学長全員を書くのは挫折。
最終的に(時間の都合もあって)人数を大分絞り、相楽学長と美奈都・篝(+紫)だけを登場させました。

「あり得たかもしれない幸せな未来」、すなわち美奈都と篝がタギツヒメとの戦いで犠牲にならなかった世界を描いたわけですが、これは私が見たい未来でもありました。
特に、この後に円盤3巻の特典ショートストーリーを読み、ますます美奈都と篝が紫様の周りにいる未来(現在)であったなら、と思うようになりました。
美奈都と篝のかわいい喧嘩や、紫様の意外とお茶目なところがちゃんと描けていたらいいなと思います。

きっといつまでも一緒

6月22日(金)投稿。アニメ23話と24話の放送の間。
薫の誕生日SS(6日遅れ)です。紫様と薫の誕生日が3日しかないの厳しすぎるって思いながら書いていた気がします。
内容は、アニメ1話よりも前(ドラマCD0.5話よりも前)で、薫が将来長船を卒業したときにエレンと離れ離れになることを考え、不安になるというお話です。

やりたかったことは前述の通り「薫から見たエレンのかっこいいところ」を描くことでした。
このSSの元になっているのは、とじとも「刀使のエピソード」でエレンが研究者を目指していると笹野美也子さんに語るお話で、それを読んだときからエレンの誕生日ではこのお話を書こうと思っていました。
アニメ14話でも描かれましたが、エレンのしっかりと自分を持っているところ、これから進む道についてしっかりとした意志と決意を抱いているところがかっこいいと思っています。
それに加えて、薫を包み込む包容力もある。これはエレンの誕生日のときの逆で、薫の不安をエレンが支える方ですね。
そういったエレンの心の大きい一面を描きたいな、と思ったのがこのSSでした。
終盤のエレンの「『刀使』は御刀で実際に戦っている人たちだけを指すわけじゃない」という台詞が、一番書きたかった台詞だったように思います。

まあ、これも後に円盤4巻の特典ショートストーリーと矛盾することが判明するわけですが……。
そんなもんだよね。

心からの笑顔

9月20日投稿。しばらく忙しかったことで、前のSSから大分から日付が空きました。
ミルヤさんの誕生日SS(63日遅れ)です。
内容は、これまたアニメ12話と13話の間で、自分の笑顔について悩むミルヤさんと、「ミルヤさんは笑うときはちゃんと笑う人だと思うけどなぁ」と思う清香がショッピングに出掛けるお話です。

テーマの元ネタは、とじとものミルヤさんのホーム画面ボイスです。
余談ですが、「一部の方に顔が怖いと指摘された」は呼吹なのかなぁと私は思ってますね。
笑顔の話をするというのはすぐに決まったのですが、どうお話を展開させていくかにはかなり悩みました。
あらすじが決まってから間を繋いでいくのにもかなり苦労し、実際このSSには1ヶ月くらい時間が掛かっているはずです。
でも、やりたいこととして「ミルヤさんにとっても調査隊という場所が大切な場所であってほしい」という軸を定めてからは、まあまあすんなり最後まで流れたかなという気がします。

同じ眼をした人

10月2日投稿。タイトルは「Heart of Gold」の歌詞が元ですが、沙耶香は出てきません。
舞衣と、姫和の平城学館でのパートナー岩倉早苗の類似性についてのお話です。
元はツイッターに上げたSSで、それを1から大幅に書き直したものになります。
ツイッターとかprivatterに書いた(即興)SSはいくつかあって、その内手直ししてpixivに上げたいとずっと思っているのですが全然できてない……。

やりたかったことはそのまま『舞衣と早苗が似ている』ということです。
可奈美に対しての舞衣と、姫和に対しての早苗の立場は近いものがあると思います。
もちろん近いだけで、全く同じというわけではないのですが。
二人とも、それぞれの相手の心の弱いところに気付いているのですが、それをどうにかできるのは自分ではない誰か。
だとしても可奈美にとって舞衣は、姫和にとって早苗は、確かに心の支えであったはずです。
円盤1巻の特典ショートストーリーで、姫和は早苗のことをあんなにも想っているわけですから。

未来へ歩く

10月16日投稿。歩の誕生日SS(当日)です。
アニメを見返す中で3話に累さん、16・17話に歩の誕生日が書かれていることに気付き、書くかどうかは正直迷ったのですが、どちらも書きたい話がすぐに浮かんできたので書くことにしました。
内容は、アニメ24話で可奈美と姫和が現世に戻ってきてから御前試合までの間に、病院でリハビリをする歩のところに可奈美がやってきて話をする、というものです。
実は結構お気に入り。

やりたかったことは、歩に可奈美と『話』をしてほしかった、というものです。
この『話』は当然口で話すだけではなく、剣も交えた対話です。
20話の可奈美、22話の沙耶香によって自らの過ちに気付いた歩が、23話の終わりに「衛藤さんに謝らないと」と言う、その対話の結果が見たかった、というのがモチベーションでした。
謝って、可奈美から立ち合いに誘って、歩が打ちひしがれて、可奈美の言葉で立ち直る――という話の流れはすぐに浮かんだのですが、実際書くにあたっては歩の謝罪と自己嫌悪をどう書くか、そこから何を可奈美が剣によって語るか、を考えるのに苦労した記憶があります。
なんせ可奈美ちゃん、リハビリ中というのもあって実力差のある相手に対して、すごく冷酷な戦術を取ってくるので。
書きながら、「ちょっと可奈美さん、本当に歩を元気付ける気あります!?」と内心思っていたりしました。
自分で書いてるはずなのにキャラクターが全然制御できない動きをして困ること、割とある。

もう一つやりたかったのは、可奈美を歩の側から書くことでした。
アニメ13話で見せ、20話で語った後輩への喜びは、間違いなく可奈美の本心でしょう。
その可奈美がノロの抜けた歩とどのように接するのかを考えることで、可奈美の内面をより掘り下げたい、というのも一つの目標でした。
剣術による対話と口頭での会話によって、可奈美の想いがちゃんと表現できていたらいいなと思います。
最後に自分から立ち合いを申し込む歩と、それを受ける可奈美の嬉しくてたまらない笑顔が、このSSで一番描きたいシーンでした。

ちなみに歩と可奈美の立ち合いをセッティングしたのは美弥というつもりで書いていて、可奈美が「歩が御刀を振れるくらいには回復した」ことを知っているのは、美弥から聞いたという裏設定でした。

鞘の中の覚悟

10月24日投稿。真希の誕生日SS(92日遅れ)です。
これだけ遅れると誕生日とは、という感じですが。
内容はアニメ1話より前のお話で、夜見が親衛隊に加入してからどのように真希と信頼関係を築いたのか妄想したものになります。
親衛隊を書いたSSはこれが初めてなんですが、これのネタが固まったぐらいのときに、練習として夜見の心情を書いたワンライ(1時間ライティング)をしていたりしました。

真希の誕生日SSで何を書こうかと考えていたときにふと思いついたのが、まだ夜見が親衛隊に加入して日が浅いころは、真希は戦う力のない(ように見える)夜見を助けようとするのではないかということでした。
真希が荒魂を受け入れた理由は、救えなかった自らの部下のような人をもう出さないことなのですから。
一方の夜見が荒魂を受け入れた理由は、舞台に上るためです。
誰かに自らが守られることを良しとはしないでしょう。
だから、この両者は最初はぶつかり合うこともあったんじゃないのか――という妄想の下で書いたのがこのSSです。

実は、投稿したSSとは別に5千文字近くを没にしています。
元のバージョンでは、刀剣類管理局で真希と夜見が集合して山中に出動するまでのシーンがあったり、夜見に能力で助けられてからの展開が全然違っていたりして、一度二人で撤退してから夜見の索敵を使って荒魂の群れを各個撃破していました。
ですが、話の主題がどんどんブレて「夜見が自分のノロへの耐性の高さを自覚する」方になってしまっていたので、丸ごと書き直して現行のものになりました。
SS書いてる内に当初意図していた要素とは異なる要素が増えてくることはままあるのですが、ちゃんと取捨選択しないと収拾がつかなくなるということを実感した経験でもあります。

一人じゃないから

11月17日投稿。沙耶香の誕生日SS(当日)です。
タイトルは、とじともの戦闘でWaveが変わるときの「もう、一人じゃないから」が元です。
内容は、体調の悪い沙耶香が無理をしてこじらせ、舞衣に看病されるお話です。

やりたかったことは、沙耶香の成長でした。
沙耶香は元々戦う目的が自分の中に無く、命じられたから、任務だから戦っていた子でした。
その沙耶香が自分の頭で考えて行動するようになった、というのがアニメ内での大きな成長要素だと思っています。
可奈美や舞衣のおかげで『自分』というものを意識するようになり、薫から「考えること」の大切さを教わったわけです。
その沙耶香が、21話で舞衣に「強くなりたい」と話します。
これは円盤5巻特典ショートストーリーで、強くなることで可奈美や姫和を含めて皆を守れるようになりたいから――という理由であることが明示されています。
さらに沙耶香は23話で荒魂の持つ「寂しさ」を知り、24話では斬り祓った荒魂に「もう、寂しくないから」と語る姿が描かれます。
沙耶香は「強くなりたい理由」と「戦う理由」を手に入れたのです。

その沙耶香が次にぶつかる壁は何かと考えたときに、私は「全てを自分で背負い込もうとしてしまうこと」なんじゃないかと思いました。
強くなって、全てを自分が守れるようになりたい。
そう思う沙耶香だからこそ、人に頼るという発想ができなくなってしまうのではないだろうか、と。

その考えから、一人ではどうしようもない事態に沙耶香を追い込もうとして設定を組んだのがこのSSでした。
加えて一番書きたかった台詞が、舞衣の「私はいいタイミングで来れたって思うな。だって、沙耶香ちゃんが一番寂しくてたまらないときに、一緒に居られるから」でした。
他にも私の好きな舞衣と沙耶香のやり取りを、結構たくさん入れられたつもりです。
沙耶香が「舞衣」って連呼するところは、とじとも宣伝4コマのチア回を思い浮かべながら書いてました。
ただ、舞衣の「皆を頼っていい」という台詞は、SSのテーマ的に避けては通れないけれども、解釈違いを生み得ると思いながら書いていたり。

実際書いてみて意外だったのは、薫と沙耶香のやり取りが思ったより膨れ上がったこと。
その結果、全体のバランスとしては舞衣と沙耶香のやり取りが少なめになってしまったような気もしますが……。
自分で書いておいてアレですが、最後に「薫が倒れたら、私、薫の分まで働く」と薫に呼びかける沙耶香と、それに背中越しに手を振って応える薫が大好き。

進化の真価

11月24日投稿。累さんの誕生日SS(当日)です。
タイトルはまあダジャレなんですが、イチキシマヒメの話をしていることもあって、「進化」というキーワードを入れたかったというのがあります。
「進化系Colors」でもありますし。
内容は、アニメ24話以後、累さんが約束通りに皆をおいしいスイーツのお店に連れていき、そこで姫和とイチキシマヒメの話をするというものです。

累さんも誕生日を知ったとき、SS書くかどうかは正直迷ったのですが、すぐに姫和とイチキシマヒメの話をする姿が思いついたので書くことにしました。
アニメ21話で可奈美たちに合流した累さんが「私、イチキシマヒメと話が合ったんだよね」と語る姿が印象的だったのですが、この話をしてたときに当然ですが姫和はいないわけです。
累さんの姿というのは、まさに人と荒魂を区別せず同一視する、人と荒魂の共存の形の一つだったわけで、この話を姫和が聞いたときにどのような反応するのかに興味がありました。

そういう話をするという意味では、このSSは少し消化不良かもしれません。
今思うと、もう少しその辺りの姫和と累さんの会話を掘り下げたかったようにも思います。
私の悪い癖なんですが、SSの導入を書いている間にいろいろと脱線をしてそっちで話が膨れ上がり、本題にやっと辿り着いたと思ったら全然掘り下げずに通り過ぎてしまうことがしばしばあって……。
本当は一度書き終えた後で全体のバランスを加味して調整したり加筆したりする必要があったように思います。反省点。
とはいえ、姫和がどう変化をしたのかという軸では一応ちゃんとまとまりのある話にはなったようには思っています。
……なってるといいのですが。

居場所

12月4日投稿。呼吹の誕生日SS(当日)です。
内容は、これもアニメ12話と13話の間で、ざっくり言うと自分の性格の特殊性に悩む呼吹が、存在を肯定される話……でしょうか。
自分でも要素を整理しきれてないのが、文字数が膨れ上がってしまった原因かもしれません。
高津学長がいなくなった鎌府に真庭学長の査察が入り、今まで自由にやれていた鎌府という居場所が奪われるかもしれないと不安を抱き、呼吹の機嫌が悪くなる、という出だしです。

呼吹は荒魂が絡まなければすごく常識人で、意外と物事を冷静に観察しているところは一つ魅力だと思っています。
ですが、呼吹の精神性について掘り下げるとなると、私は荒魂への執着を掘り下げていきたくなります。
彼女が荒魂に対して用いる単語はなかなかに特殊で、「バラバラにする」「ぶっ壊す」などの猟奇的な発言がしばしば見られます。
なぜ呼吹が荒魂に関しての執着を持っているのか。
とじともがリリースされた直後は何か特別な理由があるのだろうと思いましたし、実際そうで、これから先のメインストーリーで描かれる予定なのかもしれません。
ただ、このSSでは「気が付いたら荒魂を斬るのが好きだった」という立場で書いています。
何か劇的な出来事があって『異常』になったほうがある意味楽とも言える、という視点が書かれた話を前に見たことがあります。
自分でも『異常』をその出来事の結果として受け入れられますし、『異常』が解消される可能性もあるからです。
そこで今回は、呼吹が自ら自然に抱いてしまった『異常性』について冷静に観察することができ、苦悩もしているという立場でSSを書きました。

もう一つやりたかったことは、呼吹と他のキャラクターの様々な絡みでした。
呼吹は誰と絡んでも面白い化学反応の起きる子だとよく感じていて(というかそういう話をツイッターで見るのですが)、その中で今回はつぐみや智恵との絡みを書きました。
出来上がったSSは実はプロットと変わっていて、最初は呼吹の存在を肯定するのはミルヤの予定でした。
時系列順に並べれば、智恵と喧嘩(というのは適切じゃないと思うけど)し、つぐみにあやされ、ミルヤに肯定され、智恵と仲直り(というのはこれまた適切じゃないと思うけど)するというプロット。
ただ、ミルヤとの話の後で智恵と何の話をすればいいのか分からなくなったのと、時間と文字数の関係でミルヤパートを削除することにしました。
ただ、それはそれで話の構造がはっきりしたように思うので、よかったんじゃないかと思っています。

最後に

こんな長くなるとは思ってなかった。
絶対ここまで読んでる人いないと思う。

ところで、今年中に書きたいSSが

  • 可奈美誕生日SS(ネタはある)
  • 清香誕生日SS(ネタはある)
  • 寿々花誕生日SS(ネタは一応ある)
  • 親衛隊合同
  • かなひよ合同
  • 夜見誕生日SS

とあるんですが、これ絶対全部は書けませんよね……。